December, 2, 2025, 大阪--大阪大学大学院工学研究科の趙研准教授、山下葵平(博士後期課程)、安田弘行教授、中野貴由教授らの研究グループは、金属3DP特有の超急冷凝固・冷却現象に由来して形成される、マイクロメートルスケールの「結晶方位ラメラ組織」とナノメートルスケールの「セル状組織」からなる高強度階層組織の変形挙動と、強化機構を初めて解明した。
これまで、同組織の変形挙動や強化機構、セル状組織の詳細な形態や形成機構は全く解明されておらず、最適な組織形態の提案や人為的制御には至っていなかった。
今回、金属3DPにて作製されたニッケル(Ni)基超合金に形成される階層組織に着目し、結晶方位ラメラ組織中の幅の広い主層(体積割合の高い層)と幅の狭い副層(体積割合の低い層)の変形挙動を「その場中性子回折法」によって個別に解析することで、造形体全体のマクロな強度が主層よりも幅の狭い副層の強度によって決定されることを明らかにした。さらに、セル状組織が、「特定元素の濃化した偏析領域」と「転位が集積した転位セル」とからなる小角粒界であることを見出すとともに、金属3DPでの造形時のプロセス条件(レーザの出力や走査速度など)によって決定される溶融池からの熱影響に応じて、偏析領域と転位セルの形態が異なる2種類のセル状組織が形成され、それぞれが異なる強化能を有する微細化強化を生じることを初めて発見した。加えて、ナノメートルスケールでの組織解析によってセル状組織の形態を調査するとともに、計算的手法により溶融池の熱履歴を解析することで、それらの形成機構を解明し、溶融池の冷却速度とその周囲に形成される温度分布の制御に基づく、セル状組織形態の人為的制御技術を確立した。
このように、セル状組織に由来する新たな強化機構を結晶方位ラメラ組織の特殊な変形挙動に重畳するという新奇力学機能制御法は、従来法では成し得ない高力学機能を実現する画期的な手法であり、高力学機能部材の創出を通じて幅広い分野における機器やシステムの軽量化、低燃費・高効率化、さらには耐久性・安全性の向上に貢献することが期待される。
研究成果は、Elsevier発刊の材料科学のトップジャーナルである「Acta Materialia」誌に11月11日(火)午後2時(日本時間)に公開された。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)