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3Dプリンティングでバイオインスパイアード構造を構築

October, 7, 2025, Singapore--シンガポール工科大学(Singapore University of Technology and Design:SUTD)の研究チームは、ツールパス(toolpath)に最適化された蒸着ベースの方法を使用して、ロボット工学やウェアラブル技術などの業界の設計を最適化できる、バイオインスパイアード構造を3Dプリントする革新的なアプローチを提案した。

1985年に3Dプリンティングが初めて導入されたとき、製造業にとって大きな転換点となった。従来の製造技術よりも安価であることに加えて、設計をカスタマイズし、オンデマンドでプロトタイプを作成できる機能も約束された。その技術はまだ比較的新しいと考えられているが、過去10年間で、航空宇宙、防衛から医療に至るまで、あらゆる分野で3Dプリンティング方法の需要が加速している。

しかし、SUTDのPablo Valdivia y Alvarado准教授は、3Dプリンティングがその可能性を最大限に発揮できるようになるまでには、まだ道程があると考えている。従来の3Dプリンティングでは、ノズルを使用して材料を層ごとにプリントする。ノズルがたどる経路をツールパスと呼ぶ。

ただし、層ごとのプリントは、硬化が遅く、硬化に時間がかかるシリコーン、エポキシ、ウレタンなどの材料での使用には相性が悪い。これらのタイプの材料は、柔らかい機械的メタマテリアルを作成するためによく使用され、格子やウェブ構造などの軽量で自然にインスパイアされた構造に使用される。直接インク書き込みなど、3Dプリンティングにおける堆積ベースのプロセスでは、これらの材料を使用してそのような構造の作成はできるが、これらは最適化されていないツールパスが問題になっている。

「これらの問題はプリント時間の延長につながり、未硬化状態での動的な材料挙動によってさらに悪化する」とValdvia y Alvarado准教授は説明した。したがって、複雑なバイオインスパイアード構造を3Dプリントすることは依然として困難である。

この課題に取り組むために、SUTDのValdvia y Alvarado准教授と同氏のチームは、アーキテクチャ設計アプローチを提案し、論文「ソフトメカニカルメタマテリアルのアーキテクチャ設計と製造」(“Architected design and fabrication of soft mechanical metamaterials”)に発表した。

特に、チームは、ダイレクトインク書き込みを使用して軽量構造を製造する方法を検討し、まずツールパスを最適化する方法を設計した。オブジェクトの3D設計を点と単純な形状に分解することで、チームはセグメント化されたツールパス設計と連続ツールパス設計の両方を利用して、全体的なツールパスを改善することができた。これにより、チームは不要なスタートとストップの少ないツールパスを生成することができた。

このアプローチをテストするために、チームはこの方法を使用して、最適化されたツールパスを生成するために、いくつかのタイプのバイオインスパイアード構造をプリントした。チームはまず、直接インク書き込みへの適合性をさらに高めるために、プリンティング材料の特性を調整しようとした。市販のシリコーン素材を3つ選択し、Thivexとして知られる改質剤を追加することで、チームは直接インク書き込みにより適した9つの異なる素材の組み合わせを作成し、特性を分析した。

次に、研究チームは、提案されたアプローチを使用して繊毛、ウェブ、葉のような構造、格子を3Dプリントし、さまざまな環境で構造の機能をテストした。3Dプリントされた繊毛の場合、研究チームはそれを吸盤に追加すると吸盤の引き抜き力が向上することを確認した。一方、3Dプリントされた格子は効果的なエネルギー吸収構造であることが証明され、最大衝撃ピーク力が最大85%減少することが実証された。

これらの発見により、チームは、バイオインスパイアード構造をプリントするための蒸着ベースの3Dプリント方法の将来の開発について楽観視している。

Valdivia y Alvarado准教授は、「このアプローチはまだ研究段階にあるが、カスタマイズされた高性能設計の可能性により、ロボット工学、ウェアラブル技術、高度なメタマテリアルに焦点を当てた業界に非常に関連している」とコメントしている。

同氏はまた、堆積ベースの積層造形プロセスが高度なアプリケーションにニッチ市場を見出し、大量かつ標準化された構造を製造するために不可欠な従来の方法を補完する可能性があると説明した。

今のところ、チームは方法のスケーリング効率を向上させ、コストを削減し、材料の汎用性を産業環境に拡大することに注力している。これを行うために、チームは、さまざまな材料をプリントできるマルチマテリアルプリンティングを模索し、チームが「エンジニアリングメタマテリアル」と呼んでいるものを作成する予定である。
さらに、チームは、機械学習技術により、3Dプリンティングユーザが生成したいメタマテリアルデザインのパフォーマンス指標を指定できるようにする方法も調査する。