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3Dプリンティングによる人工軟骨

March, 22, 2024, Wien--TU Wienで、人工組織を製造する新しいアプローチが開発された。細胞は、3Dプリンタで作くられる微細構造で成長させられる。

例えば、損傷した軟骨を置き換えるために、実験室で組織を成長させることは可能か? TU Wien(Vienna)では、世界中で使用されている他の方法とは大きく異なる技術を使用して、実験室で代替組織を作るための重要な一歩を踏み出した。

特殊な高解像度3Dプリンティングプロセスを使用して、生体適合性と分解性プラスチックで作られた小さな多孔質の球体を作成し、続いて細胞でコロニー形成される。これらのスフェロイドは任意の形状で配置でき、異なるユニットの細胞がシームレスに組み合わさって均一な生きた組織を形成する。現在、TU Wienで、この概念が実証されている軟骨組織は、以前はこの点で特に難しいと考えられていた。

細胞のスカフォールドとしての小さな球形ケージ
「幹細胞から軟骨細胞を培養することは、最大の課題ではない。主要な問題は、通常、結果として得られる組織の形状をほとんど制御できないことである。これは、このような幹細胞の塊が時間の経過とともに形を変え、縮小することがよくあるという事実にも起因している」と、今回の研究の著者の1人、TU Wien材料科学技術研究所のOliver Kopinski-Grünwaldはコメントしている。

これを防ぐために、TU Wien研究チームは、特別に開発されたレーザベース高解像度3Dプリンティングシステムを使用して、直径わずか1/3㎜の小さなサッカーボールのような微小ケージのような構造を作成するという新たなアプローチに取り組んでいる。それらは支持構造として機能し、任意の形状に組み立てることができるコンパクトなビルディングブロックを形成する。

幹細胞はまず、このフットボール形状のミニケージに導入され、これにより小さな体積はすぐに完全に一杯になる。「このようにして、細胞が均一に分布し、細胞密度が非常に高い組織要素を確実に生産することができる。これは、これまでのアプローチでは不可能だった」と、TU Wien 3Dプリンティングおよびバイオファブリケーション研究グループのリーダー、Aleksandr Ovsianikov教授は説明している。

共に完璧に成長する
研究チームは、分化幹細胞を使用した。つまり、もはやどんなタイプの組織にも成長できないが、特定の種類の組織(この場合は軟骨組織)を形成するようにすでに決定されている幹細胞である。このような細胞は、医療用途では特に興味深いものだが、軟骨細胞に関しては、より大きな組織の構築は難しい。軟骨組織では、細胞は非常に顕著な細胞外マトリックス、細胞間の網目状の構造を形成し、異なる細胞スフェロイドが望ましい方法で一緒に成長するのを妨げることがよくある。

3Dプリントされた多孔質スフェロイドが所望の方法で細胞とコロニーを形成する場合、スフェロイドは任意の形状に配列することができる。ここで重要な疑問は、異なるスフェロイドの細胞も結合して均一で均質な組織を形成するのかということである。

「これはまさに、われわれが初めて提示できるものである。顕微鏡で見ると、隣接するスフェロイドが一緒に成長し、細胞が一方のスフェロイドから他方のスフェロイドへ、またはその逆に移動し、シームレスに接続され、空洞のない閉じた構造になる。これまで使用されてきた他の方法で、隣接する細胞の塊の間に目に見える界面が残るのとは対照的である」(Kopinski-Grünwald)。

3Dプリントされた小さなスカフォールドは、組織が成熟し続ける間、全体的な構造に機械的安定性を与える。数ヶ月の間に、プラスチック構造は劣化し、それらはたやすく消え、完成した組織を所望の形状として残す。

医療応用への第一歩
原理的には、この新しいアプローチは軟骨組織に限定されず、骨組織などの様々な種類の大きな組織を調整するためにも使用可能である。とは言え、途中で解決すべき課題がまだいくつかあり、結局のところ、軟骨組織とは異なり、特定のサイズを超えるこれらの組織には血管も組み込まれる必要がある。

「最初の目標は、損傷後に既存の軟骨材料に挿入できる、小さなオーダーメイドの軟骨組織片を製造することである。」いずれにせよ、球状のマイクロスカフォールドを用いて軟骨組織を作製する方法が原理的に機能し、他の技術よりも決定的な優位性を持っていることを示すことができた」とOliver Kopinski-Grünwaldはコメントしている。