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3Dプリントされた「生きている材料」、汚染水を浄化

September, 22, 2023, San Diego--カリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)の研究者は、水から汚染物質をきれいにするための持続可能で環境に優しいソリューションを提供できる新しいタイプの材料を開発した。

「改良生物材料」と呼ばれるこの構造は、海藻ベースのポリマと、様々な有機汚染物質を良性分子に変換する酵素を変換するように遺伝子操作されたバクテリアを組み合わせた3Dプリント構造。バクテリアはまた、お茶やチョコレートによく見られるテオフィリンと呼ばれる分子があると自己破壊するように遺伝子操作されている。これは、それらが仕事をした後にそれらを排除する方法を提供している。

研究チームは、Nature Communications掲載論文で新しい除染材料について説明している。

「革新的なのは、ポリマ材料と生物学的システムを組み合わせて、通常の合成材料では不可能な方法で機能し、刺激に応答できる生体材料の作成である」と、研究を共同主導したカUC San Diegoのナノエンジニアリング教授、Jon Pokorskiは話している。

この研究は、UC San Diego材料研究科学工学センター(MRSEC)のエンジニア、材料科学者、生物学者間の協働だった。

「この協働により、シアノバクテリアの遺伝学と生理学に関する知識を適用して、生きた材料を作成することができた」と、生物科学部のメンバー、Susan Goldenは話している。「今、われわれはシアノバクテリアに新しい機能を組み込んで、より有用な製品を作ることについて創造的に考えることができる」。

この研究で生きた材料を作るために、研究チームは海藻由来の天然ポリマ、アルギン酸塩を使用し、それを水和させてゲルを作り、シアノバクテリアとして知られる水に住む光合成細菌の一種と混合した。

混合物を3Dプリンタに供給。3Dプリントされた様々な形状を材料としてテストした後、研究チームは、グリッド状の構造がバクテリアを生き続けるのに最適であることを発見した。選択された形状は表面積と体積の比率が高く、ほとんどのシアノバクテリアを材料の表面近くに配置して、栄養素、ガス、光にアクセスする。

表面積の増加はまた、除染でその材料をより効果的にする。

概念実証実験として、研究チームは、材料中のシアノバクテリアを遺伝子操作して、ラッカーゼと呼ばれる除染酵素を継続的に生成した。研究によると、ラッカーゼはビスフェノールA(BPA)、抗生物質、医薬品、染料など、さまざまな有機汚染物質を中和するために使用できる。この研究では、研究チームは、その材料を使用して、染料ベース汚染物質インディゴカルミンを除染できることを実証した。インディゴカルミンは、繊維産業でデニムを着色するために広く使用されている青色染料。試験では、材料は染料を含む水溶液を脱色した。

研究チームは、汚染物質が除去された後にシアノバクテリアを排除する方法も開発した。チームは、テオフィリンと呼ばれる分子に反応するようにバクテリアを遺伝子操作した。その分子は、バクテリアが細胞を破壊するタンパク質を生成するためのトリガーとなる。

「生きている物質は関心のある汚染物質に作用し、その後に小分子を追加して細菌を殺すことができる。このようにして、遺伝子組み換えバクテリアが環境に残っているという懸念を軽減できる」とPokorskiは、話している。

研究チームは、好ましい解決策は、化学物質を添加することなくバクテリアに自己破壊させることであると指摘している。これは、この研究の今後の方向性の一つとなる。

「われわれの目標は、すでに環境に存在する刺激に反応する材料を作ることである」(Pokorski)。

(詳細は、https://today.ucsd.edu)