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脊椎疾患を金属3Dプリンティングで革新

June, 10, 2022, 大阪--大阪大学大学院工学研究科の中野貴由教授の研究グループは、国立病院機構北海道医療センターの伊東学統括診療部長、帝人ナカシマメディカル株式会社らとの共同研究によって、全く新たな設計コンセプトの脊椎ケージを開発し、大型動物実験によりその高い性能を証明した。
 このケージは、ハニカムツリー構造(Honeycomb Tree Structure)と名付けられた一方向の「孔」と孔壁表面での微細「溝」構造という階層的構造を有することを設計の最大の特徴とする。溝は、骨を作る骨芽細胞の一方向配列化を促し、質の高い骨を早期からいち早く誘導し、孔は、形成された骨に常に力をかけ続けることで骨の質を長期的に維持する。つまり、ハニカムツリー構造は、早期・長期の骨の健全性化を達成するカギとなる。

今回、中野教授らの研究グループは、金属3Dプリンティングを駆使することで微細なハニカムツリー構造を設計通りに作製し、ヒツジ脊椎への埋入試験により、迅速な骨誘導と、その結果、埋入からわずか8週間後に、驚くべきことに、従来型のケージよりも3倍も強い骨との結合強度を示すことを明らかにした。しかも、これまで、骨形成促進のために当たり前のように使われてきた自家骨(自分の腸骨等から採取した骨)をケージ内部に使用することなく、この超高強度化が可能。この成果により、脊椎疾患を有する患者の、脊椎機能の早期回復が可能となり、Quality of Life (QOL)の向上が期待される。

研究成果は、北米脊椎学会からElsevier発刊の「The Spine Journal誌」に、6月8日(水)午前10時(日本時間)に公開された。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)