May, 20, 2022, 仙台--東北大学の研究チームは、3Dプリントで精密に設計した多重細孔構造によってイオンの高速移動が可能となり、世界最大級のエネルギー密度と出力密度を有するスーパーキャパシタを実証した。
風力や太陽光など出力変動の大きい再生可能エネルギー利用の増加に伴い、電力負荷平準化のための大規模エネルギー貯蔵デバイスに注目が集められている。エネルギーデバイスのエネルギー密度・出力密度の向上は、駆動時間の向上やハイパワー電源として利用するために重要。現行のエネルギーデバイスでは厚み100 µm以下の薄いシート状の電極が用いられているが、その電極シートを厚くすることでエネルギー密度の向上が可能。しかし、厚い電極内ではイオンが十分な速度で移動することができず、出力密度が大きく低下する課題がある。このようにエネルギー密度と出力密度にはトレードオフの関係があり、高いエネルギー密度と出力密度の両立が課題となっている。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程の勝山湧斗(研究当時、東北大学多元物質科学研究所兼務)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のRichard B. Kanerディスティングイッシュトプロフェッサー、東北大学多元物質科学研究所の小林弘明講師、岩瀬和至助教、本間格教授、東北大学材料科学高等研究所の工藤朗助教らの国際共同研究チームは、3Dプリンタを用いてイオンが高速で移動できる経路を人工的に設計した多重細孔炭素電極材料を作製した。これにより従来の蓄電デバイスの10倍以上の厚みを有する電極でも高速なイオン移動が可能となり、世界最大級のエネルギー密度と出力密度を有するスーパーキャパシタの作製に成功した。
研究成果は、2022年4月21日に独科学誌Advanced Functional Materials誌にオンライン掲載された。
(詳細は、http://www.tohoku.ac.jp)