March, 25, 2022, Barcelona--IBECの研究者は、IDIBAPSと協働で、血糖値の変動に、また体外のインスリン生産に反応できる非毒性小球を開発した。膵臓β細胞を含むこれら生体模倣スフェロイドは、3Dバイオプリンティングに基づいて作製された。このアプローチは将来、糖尿病治療のβ細胞移植手段の臨床成果改善に役立つ可能性がある。また、試験管内薬剤スクリーニングプラットフォームにも役立つ。
糖尿病は、血中血糖値調整に関与するホルモン、膵臓のβ細胞によるインスリン生産減退に特徴付けられる代謝疾患。2019年、WHOによると、糖尿病による死亡は世界で150万人、現在、この病気に罹っている人は4億2000万人を超える。
1型糖尿病(T1DM)では、自己免疫疾患、膵臓ランゲルハンス島にあるβ細胞が、免疫系によって破壊され、インスリンを生産しなくなる。この場合の最も普及している処置は、患者が生涯を通じて定期的にインスリンを注射し、血中の高い血糖値持続をコントロールすることである。しかし、この治療は、β細胞によるリアルタイムインスリン分泌を真似るわけではないので、深刻な慢性合併症、心疾患や腎症などを起こすことになる。
T1DMに対する有望な代替治療は、β細胞を含む膵臓ランゲルハンス島を患者に移植すること。残念ながら現在、貧酸素化や細胞の血管新生などの合併症のために、それは臨床的に適用できない。移植後の保持が強く制約を受けるからである。
これらの障害を克服するために、カタロニアバイオエンジニアリング研究所のチームは、IDIBAPSの研究者と協力して、β細胞をコラーゲンタニン酸スフェロイドに封入するために、3Dバイオプリンティングに適用する高スループット法を開発した。この革新的戦略は、膵臓ランゲルハンス島移植の成功率を高めることができる。成果は、Advanced Materials Technologies誌に発表された。
β細胞を含む3Dバイオプリントされたスフェロイド、試験管内でインシュリンを製造
移植後にβ細胞保持を増やす1つの戦略は、保護半透性生体材料を使って細胞をカプセル化すること。これらの人工組織は、スフェロイドまたはカプセル化マイクロスフィアとして知られており、生体適合性である。これにより、一段と効果的な細胞付着が得られる。したがって、細胞消失が低減し、患者の免疫系に対して物理的な保護障壁として機能する。
IBEC研究者が提案した新しいアプローチは、3Dバイオプリンティング技術を使って、タニン酸と架橋したコラーゲンスフェロイドを開発すること、これは生体内β細胞の細胞外マトリクス微小環境を模倣する試みである。タニン酸との架橋は、コラゲナーゼ分解を防ぎ、スフェロイド構造の一致性を強化し、極めて低い変動性で、マイクロスフィア径のカスタマイズを可能にする。
新戦略を検証するために研究チームは、ラットのインスリノーマ細胞を含むタニン酸と架橋した3Dコラーゲンベースマイクロカプセルを用意した。チームは、スフェロイドが、細胞生存と代謝活動を30日まで維持したことを観察した。これは、酸素と栄養の正しい拡散を反映している。また、タニン酸架橋戦略は、スフェロイド内のβ細胞保持を改善した。
この新しい3Dバイオプリンティング処置により、インスリン分泌によるグルコースに反応することができる多数のマイクロスフィアの製造が可能になる。また、糖尿病治療のためにβ細胞移植を狙う先端的機能研究にとって役立つ。さらに、この技術は、新たな道を開き、幅広い範囲の移植可能な細胞タイプのカプセル化に適用できる。
(詳細は、https://ibecbarcelona.eu)