January, 11, 2022, Hong Kong--香港城市大学(CityU)の研究者をリーダーとするチームは、3Dプリンティングを使い、超高強度、高延性、超軽量チタンベース合金の開発に成功した。その成果は、様々な構造応用向けに、前例のない構造と特性を備えた合金の設計に新たな道を開く。
CityU先端研究所(HKIAS)シニアフェロー、工学部名誉教授、Liu Chain-Tsuanをリーダーとする研究チーム、材料科学&工学(MSE)ポスドク研究者、Dr Zhang Tianlongが実験を行った。論文は、Scienceに発表された。
3Dプリンティング、単なる成形技術ではない
ほとんどの人々は、3Dプリンティングは、ワンステップで複雑な形状の機械部品を製造できる革命的な技術と考えている。「しかし、それは単なる形状設計というより、材料設計で重要な可能性を持つことをわれわれは明らかにした」(Dr Zhang)。
冶金学者は、合金コンポーネントに均一性の欠如は望ましくないと考えがちである。それが、脆さなど、悪い特性につながるからである。積層造形(AM)プロセスにおける重要な問題の一つは、高速冷却中におけるこの不均質性の除去方法である。しかし、Dr Zhangの以前のモデリングとシミュレーション研究は、コンポーネントにおけるある程度の異質性が、実際に独特の、異質微細構造を作ることを確認した。これは、合金の特性を強化するものである。したがって同氏は、AMを使って、これらのシミュレーション結果を実現しようとした。
固有の微細構造の設計
「AM固有の機能により、われわれは、マイクロ構造の設計における自由度が大きくなる」と、論文の筆頭著者、Dr Zhangは説明している。「特に、3Dプリンティングの助けを借りて、マイクロメートル微細勾配を持つ合金を製造する。これは、従来のいかなる材料製造法でも達成できない」(Dr Zhang)。
提案した方法は、2つの異なる合金、チタン合金粉末とステンレススチール粉末を集光レーザビームを用いた溶融と混合に関与する。レーザパワーとそのスキャニング速度などのパラメタを3Dプリンティングプロセス中に制御することで、チームは,新しい合金で元素の非均質な組成を制御的に作ることに成功した。
「AMの利用に加えて、2つの粉末混合の組成が、新しい合金における高い準安定性を備えた前例のない溶岩の様なマイクロ構造を作るためのもう1つのカギである。これら独特のマイクロ構造は、最高の機械的特性を生み出し、その合金は高強度であるが、延性があり、軽量になる」とLiu教授はコメントしている。
新しい合金、40%軽量で超高強度
ステンレススチールは、一般に7.9g/㎝3であるが、新しい合金は、わずか4.5 g/㎝3であり、40%程度軽量である。実験では、溶岩のようなマイクロ構造のチタン合金は、約9%の一様な伸びで高抗張力~1.3ギガパスカルを示した。また、それは300メガパスカル以上で優れた加工硬化能力もあり、これは、亀裂までの安全マージンが大きく、構造応用に有用である。
「これら優れた特性は、様々なシナリオにおける構造応用に有望である、例えば航空宇宙、自動車、化学工業および医療産業などである」(Liu教授)。
「固有のマイクロ構造と特性を備えた新しい合金の開発に3Dプリンティングを利用する初のチームとして、研究チームは、この設計アイデアをさらに様々な合金システムに適用し、新しい合金の他の特性を研究したい」と同氏は話している。
(詳細は、https://www.cityu.edu.hk)