October, 7, 2025, 京都--島津製作所のグループ会社として、リークディテクタや工業炉、液送ポンプなど産業機器の開発・販売を手掛ける島津産機システムズ株式会社は、小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」に金属種・厚みなどの情報を入力するだけで、3Dプリンタの金属材料による焼結前の造形物について、レシピ(材料ごとに最適な熱処理の時間・温度・圧力など設定データ)を自動的に算出する「自動レシピ生成機能」を開発した。
7月下旬以降の出荷分の同製品から標準で搭載するとともに、納入済み装置にはユーザの求めに応じて無料でインストールする。この機能の対象金属は、第一セラモ株式会社が販売するステンレス鋼2種類(SUS316L、SUS630)および純銅の3材料。島津産機システムズは2021年4月から2025年3月末までエス.ラボ株式会社、第一セラモ、近畿大学とともにMEX方式(材料押出積層、Material EXtrusion)の金属3Dプリンタ関連技術について共同で研究しており、この機能の開発もその成果の一部になる。
近年、様々な製造業が導入している金属3Dプリンタ技術は、敷き詰めた金属粉末をレーザや電子ビームで溶かしながら造形する「PBF方式」(粉末床融解結合=Powder Bed Fusion)が主流。一方、島津産機システムズや第一セラモが研究しているMEX方式は、金属粉末を混ぜた樹脂材料を熱で溶かしながら造形した後に、真空脱脂焼結炉で熱して樹脂を除き金属焼結体を得るというものである。高額なレーザを用いる方式より、「装置が安価で、造形も速い」というメリットを持っている。しかし、樹脂を取り除く「脱脂」および密度を高めて金属として仕上げる「焼結」の温度・圧力の設定が困難だった。
タッチパネルのナビゲーションシステムの採用によって操作性を高めた「VHS-CUBE」は、「自動レシピ生成機能」の搭載を見据えた脱脂焼結炉である。島津産機システムズおよび第一セラモは、引き続き対象となる材料およびレシピの開発に取り組み、MEX方式の金属加工技術の高度化および普及に取り組んでいく。
小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」の「自動レシピ生成機能」について
金属の種類、造形物の最大厚み、重量、数量 セッタ(炉内で造形物を載せる板)の材種、重量、枚数などを入力することで、最適な熱処理の時間・温度・圧力などが算出され、それ以上の設定無しで熱処理を開始できる。