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ケンブリッジ大学、3Dプリントのスマートコンクリート壁を英国高速道路当局のプロジェクト用に開発

August, 21, 2023--「構築中の温度を測定するためのセンサを壁に埋め込んでおり、壁が設置されている間は、そのセンサによってデータを取得している」

オリバー・ジョンソン

英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の研究者らは、産業界との提携の下、英国の高速道路当局であるNational Highwaysのプロジェクトで使用する、世界初の3Dプリントによるコンクリート構造とするものを開発した。ヘッドウォールとして知られる保持壁の1種であるこの構造は、英国コンウォールのA30号線に設置されており、その構造に埋め込まれた、ケンブリッジ大学が設計したセンサを通して、リアルタイムの情報を提供している。

構造内のセンサは、温度、歪み、圧力などの最新測定値を提供する。研究者らによると、壁の「デジタルツイン」が、実際に発生する前に異常を検出して修正するために役立つ可能性があるという。

ケンブリッジ大学によると、ヘッドウォール構造の製造には通常、プレキャストコンクリートが使われ、型枠とかなりの鉄筋補強が必要で、形状は限られるという。英コスタイン社(Costain)、米ジェイコブス社(Jacobs)、英バーサリアン社(Versarien)からの専門家を含む同チームは、3Dプリントを利用することにより、型枠と鉄筋補強なしで、湾曲した中空壁の設計と構築に成功した。この壁の強度は、鉄筋ではなく幾何学形状によって得られる。

同大学によると、この壁は1時間でプリント可能で、高さは約2m、幅は約3.5m。研究者らはこの壁を、先進的なエンジニアリング企業であるバーサリアン社のグロスターシャーにある本社で、ロボットアームベースのコンクリート3Dプリンターを使用してプリントした。

工学部のアビール・アルタバ教授(Abir Al-Tabbaa)率いるチームは6年間にわたり、より高品質の情報をインフラから取得することを目的とした、新しいセンサ技術の開発と、既存の商用センサの有効性調査を行っている。アルタバ教授のチームは、「スマート自己治癒」コンクリートも開発している。同チームは、プリント工程の間の温度を測定するためのセンサを提供した。

「3Dプリントには超速硬セメントが必要であるため、かなりの量の熱も生成される。そこで、構築中の温度を測定するためのセンサを壁に埋め込んでおり、壁が設置されている間は、そのセンサによってデータを取得している」と、アルタバ教授は述べた。

これらのセンサは、温度に加えて、相対湿度、圧力、歪み、電気抵抗、電気化学電位を測定する。チームによると、その測定値から、センサの信頼性、堅牢性、精度、耐用年数に関する貴重な知見が得られるという。壁の3D点群とデジタルツインを生成するために、ライダ(LiDAR)システムも、プリント時の壁のスキャンに使用されている。

アルタバ教授は次のように言い添えた。「壁をデジタルにするということは、それ自体に発信能力を与えるということだ。われわれのセンサを使用することにより、その3Dプリント構造に対する理解を深め、業界におけるその普及を促進することができる」。

ケンブリッジ大学のチームは、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミック(Piezoceramic Lead-Zirconate-Titanate:PZT)センサとして知られる種類のセンサを開発した。このセンサは、電気機械インピーダンス応答を測定して、その測定値の時間変化を監視することにより、潜在的な損傷を検出する。3Dプリントの過程で壁のさまざまな箇所に埋め込まれた、8個のPZTセンサによって、負荷や歪みの存在が検出される。

同チームは、カスタムメイドのワイヤレスデータ収集システムも開発した。これにより、埋め込まれたセンサの複数周波数の電気機械応答データを、ケンブリッジ大学からリモートで収集することができる。

「このプロジェクトはリビングラボとして、その使用期間を通して貴重なデータを生成する。センサデータと『デジタルツイン』は、戦略的な道路網を対象としたより大型で複雑なセメントベースの材料のプリントに対して、3Dプリントをどのように利用して適合させればよいかを、インフラ専門家がより深く理解するために役立つだろう」と、アルタバ教授は述べた。

同チームのメンバーは以下のとおり。Sripriya Rengaraju博士、Christos Vlachakis博士、Yen-Fang Su博士、Damian Palin博士、Hussam Taha博士、Richard Anvo博士、Lilia Potseluyko博士(以上、ケンブリッジ大学所属)。コスタイン社の材料責任者で工学部博士課程のパートタイム学生であるBhavika Ramrakhyani氏、バーサリアン社のアーキテクチュラル・イノベーション・リードで10月からパートタイム学生として工学部博士課程を開始する予定のBen Harries氏。