December, 14, 2021--ハイテクから繊維にいたるまでのあらゆる分野において、従来の製造方法には必ず、それぞれ固有の制約や課題が伴う。それ以外にも、すべての業界に共通して生産チェーンのあらゆるリンクに影響を及ぼす、影響因子が存在する。例えば、利用可能な材料、労働力、予算の制約や、何にも増して貴重なリソースである時間だ。付加製造(積層造形:AM)の普及と、さまざまな課題を解決に導いたその成功事例の増加は、現代工業の様相を間違いなく塗り変えている。
生産パイプラインにおける重要な作業は従来、熟練した職人の手によって、莫大なコストと膨大な時間をかけて、大量の廃棄物を生成しながら行われていた。今でも多くの企業が、相変わらず従来の方法で、多大なコストをかけて重要な作業を行っているが、そのような作業形態が近い将来廃れてなくなることを、私たちは知っている。それと同じ作業を現在、何分の1かの時間で、さらに大きな規模と高い精度で行うことができる。しかも、コスト、廃棄材料、二酸化炭素排出量は、大幅に削減される。
レーシングカーのバケットシート用金型のマイクロファクトリに設置された「Massivit 10000」
2022年は、大型3Dプリンタの年に
イスラエルのマシビット3D社(Massivit 3D)は、複合材料を対象とした同社の最新付加製造(AM)ツーリングシステム「Massivit 10000」を2022年に発表するべく、着々と準備を進めている。この先進的なAMシステムは、現代の驚異といって過言でない製品で、テキサス州ダラスで開催された「CAMX 2021」において、権威あるAward for Composites Excellence(ACE)のManufacturing部門Equipment And Tooling Innovationを既に受賞している。特許取得済みの革新的なCast-In-Motion(CIM)技術を搭載するこの次世代3Dプリンタは、コンポジットツーリングを自動化して、金型製造時間を最大で80%も短縮するように設計されており、時間とコストがかかる上に大量の廃棄物を排出する既存のツーリング方法を、置き換えることができる。Massivit 10000は、2種類の異なるプリントヘッドと、2種類の材料を混合した高度な熱硬化性材料を使用する。この材料により、低いCTE(熱膨張係数)と高温耐性が得られ、金型の直接鋳造が可能である。これによって初期マスターの製造が不要になり、繰り返し作業が削減され、約19工程からなる従来の金型製造ワークフローが、わずか4工程にまで短縮される。
Massivit 10000とその独自配合の技術は、まだ正式には市場に提供されていないが、マシビット3D社は既に、業界の常識を打ち破って、AMと製造全般の可能性の範囲を再定義するという、素晴らしい実績を打ち立てている。例えば、等方性の3Dプリント金型が造形できるシステムは、これ以外に市場に存在しない。
当然ながら、そうした技術の継続的な進歩が影響を与えるのは、AM業界だけではない。私たちの日常生活に欠かせないさまざまな業界に携わる、設計者、エンジニア、製造管理者をはじめとする無数の人々が、イノベーションのメリットを享受することになる。原材料、人材、そしてもちろん時間が大幅に削減されれば、究極的には、より良い製品がより迅速かつ低いコストで市場に投入されることになり、生産チェーンのすべてのリンクにおいて価値の向上が得られる。
積み重ねてきた成功を基盤に
マシビット3D社が2021年に発表した、現時点で最新かつ市場最先端の大型3Dプリンタは、40カ国にまたがる確立されたグローバルな設置基盤に支えられ、瞬く間に業界の高い支持を得て広く採用された。この革新的なデュアルヘッドのプリントシステムは、特定の用途要件に従って、各プリントヘッドで異なる材料を使用した同時プリントが可能で、ワークフロー効率のさらなる改善をもたらす。他の3Dプリンタの30倍の速度(直線速度は300mm/s)で動作し、実物大のプロトタイプ、金型、部品の製造時間を、数日または数週間から、わずか数時間以内にまで短縮することが可能である。
過去最高の造形速度に加えて、マシビット3D社のプリンタは、1450 x 1110 x 1800 mm という並外れた造形サイズを誇るため、1つの大型部品を製造するために多数の小型部品を造形して結合するという作業に費やされていた膨大な時間を省くことができる。今回の最新モデルは、複数の動作モード、自動スライス用のソフトウェアアルゴリズム、全般的に卓越した多用途性により、他の技術では得られないような、大型の複雑形状やアンダーカットを容易に造形することができる。Formnext 2021のイベント「Innovation In Progress」で実演展示されたこれらの機能は究極的に、従来のCNC機械加工や手作業と比べて、製造時間、労力、全体的なコストを大幅に削減する。
実際の使用事例としては、航空宇宙業界を対象とした熱成形用大型金型の製造を専門とするACS Hybrid社が、マシビット3D社のプリンタを使用した概念実証(POC)に成功している。従来の減算的な手法を使用する場合は、この工具を製造するために12個の部品を製造する必要があるのに対し、マシビット3D社の高度なAMシステムでプリントする場合は、わずか2個の部品でこれを製造することができた。3Dプリント後の仕上げ処理時間を短縮するために、このプロジェクトは高解像度設定で実行され、プリント時間はわずか16時間、同社がアクリルをベースに独自開発した複数のフォトポリマーゲルの1つであるDimengel 90の使用量は2.75 kgだった。
完成した金型は、0.063”のKydex(ABS)シートを45回剥がしても、劣化を示す顕著な兆候は見られなかった。また、従来の減算的な手法よりも少ない部品数、廃棄物量、コストで製造することができた。
かつてのパイオニアが将来のパイオニアを目指して集結
マシビット3D社を創設したのは、造形速度とサイズという広く認識されているAMの制約を打開するための革新的なソリューションに対するビジョンを持った、情熱あふれる業界リーダーからなるチームだ。同社は一貫して、3Dプリント業界に革命をもたらすというミッションを掲げている。工具や金型を製造するための同社の破壊的で包括的なソリューションは、先駆的なハードウェア、ソフトウェア、化学物質で構成される、50を超える有効特許資産を含む、膨大な知的財産(IP)ポートフォリオによって保護されている。同社が提供する一連の革新的なプリンタは、実物大のプロトタイプ、モックアップ、カスタム最終部品、工具の大型で超高速の付加製造を、市場に提供している。プロプライエタリな技術と、同社独自の3Dプリント材料である熱硬化性フォトポリマーにより、最小限のサポート構造による高速な造形が可能である。
同社独自のGel Dispensing Printing(GDP)技術は、驚異的な速度を誇る付加製造技術に、独自開発のDimengelプリント材料と高度なプリプレスソフトウェアを組み合わせたものである。アクリルベースのフォトポリマーゲルであるDimengelは、耐久性に優れた大型空洞モデルの迅速な造形を可能にする、複数の独特の性質を備えている。その高い粘度により、非垂直の部品でも最小限のサポート構造で造形することができる。
マシビット3D社はまず、大型で超高速の3Dプリンタを市場に投入して、従来のAMワークフローの定型を覆す作業に着手している。同社の3Dプリンタは、タイトなターンアラウンドタイムの達成、競争力の確保、利幅の増加、事業の拡大といった目標を達成する力を、サービスプロバイダーや製造業者に与える。それらの高度なAMシステムは、自動車、船舶、鉄道、教育および研究、舞台装置製作など、多種多様な業界の要件に対応するように設計されている。市場に投入予定の最新モデルの採用と統合が急速に進行しているなど、既に素晴らしい実績を上げているマシビット3D社が、今後に向けて何を計画しているのか、私たちには想像することしかできないが、期待して見守りたいと思う。
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