February, 2, 2023, 東京--「太海駅に設置される3DCP(3D Concrete Printing)製ベンチのデザイン」を課題として、建築学科と社会基盤学科がスタジオ型講義(4年生向け設計製図第七、および社会基盤学科3年生向け少人数セミナー)を合同開講し、この授業が日本初の建設用3DCPによる実施デザインコンペとなった。
成果物である2基のベンチは、2022年12月14日に建替工事を終えたJR東日本太海駅にて、実際に座ることができる。
コンペは、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、および3DCP事業者4社(會澤高圧コンクリート株式会社、株式会社Polyuse、クラボウ(倉敷紡績株式会社)、日揮グローバル株式会社)との産学連携により実現した。5月に行われた一次選考段階では14のデザイン原案が学生から提案され、3DCP事業者4社がその中から3案を選んだ。その後、4社も加わった学生との協働3チームが技術的検討を加え、7月に行われた二次選考段階で出された最終案の中から、「後ろ髪を引くベンチ」がJR東日本千葉支社によって最優秀案に選定された。9月に製造と性能試験が行われ、10月には太海駅に搬入設置された。
企業と学生が協働する産学連携のスタジオ型講義は、これまでにない新しい実践的教育の在り方を提示するとともに、3DCPの普及展開を促し、建設分野のDX推進に大きく貢献すると考えられる。
建設分野におけるコンクリートの3Dプリンティングに関する研究開発は、生産性向上や省資源化、造形自由度の向上に繋がるとして、世界中で進められている。一部の国では、ベンチャー企業等を中心として橋梁や住宅などへの社会実装が進められている。一方、日本国内では要素技術に関する研究に一定の成果が達成されているが、社会実装という観点では諸外国に遅れを取っている。建築・土木構造物の耐震性に関する要求性能が高いため、これまでの適用例は、ファニチャーやコンクリート工事の型枠としての試験施工などに留まっている。
構造体などのより大規模な適用へ繋げるためには、要素技術の研究開発をさらに加速させるとともに、社会実装の場を積極的に作り出していく必要がある。そのためには、組織を超えて技術、ノウハウ、データなどを共有しながら技術開発と普及展開を進めていくオープンイノベーションが重要となる。しかし、現在の3DCPの研究開発では、数社程度による連携は見られるが、開発された材料やプリンタに関する技術は囲い込まれている状況。また、そうした技術の不透明性の結果、3DCPに関心のある発注者、デザイナー、設計者が技術の詳細を把握できず、具体的な適用に踏み切れていない。
こうした背景を受け、東京大学大学院工学系研究科の友寄篤助教(建築学専攻)と大野元寛助教(社会基盤学専攻)が、土木学会の「3Dプリンティング技術の土木構造物への適用に関する研究小委員会」(委員長:社会基盤学専攻 石田哲也 教授)に参加しており、同じく委員であった発注者、3DCP事業者4社と協力し、産学連携のデザイン実施コンペを授業として企画・開催した。発注者であるJR東日本千葉支社が具体的な設計要件を提示し、学生が自由な発想でデザイン原案を考え、それを実現するための技術的検討を、3DCP事業者を加えたチームで行った。
(詳細は、https://www.t.u-tokyo.ac.jp)