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米ストラタシス社のゼイフCEO、同社のポートフォリオと今後の方向性について語る

March, 25, 2022--「感情的になって申し訳ない。気持ちがとても高ぶっているのだ」。

米ストラタシス社(Stratasys)の最高経営責任者(CEO)を務めるヨアブ・ゼイフ氏(Yoav Zeif)は、そう言って一息ついた。

同氏は今、ストラタシス社のポートフォリオを技術ごとに取り上げて、それぞれに最も適切な応用機会の概要を説明し終えたところだ。同社の「PolyJet」技術に対しては、医療モデリングが提案され、「FDM」製品に対しては、スペアパーツが一例として挙げられ、「Programmable Photopolymerisation」(P3)に対しては、最近発表されたデンマークのエコー社(ECCO)のフットウェアモールド(金型)製造が紹介された。

ゼイフ氏は、Formnextのストラタシス社のブースの中央に立っている。同氏の周りには、それぞれOrigin社とXaar 3D社の買収によって取得した「Origin One」とSAF技術採用の「H350」を含む、同社のポリマー3Dプリントハードウェアが並んでおり、各製品の内部を見ようと大勢の訪問者が集まっている。

このポートフォリオは、この数年間で意欲的に拡充されている。例えば、FDMとPolyJetの各製品ラインについては、それぞれ「F770」と「J850 Pro」という製品が開発されており、DLP、SLA、粉末床溶融結合法(powder bed fusion:PBF)に対する投資も行われている。戦略的に組み立てられたそれらの取り組みによって、ストラタシス社はポリマー3Dプリントのリーダー企業のうちの1社ではなく、最大のリーダー企業としての地位を確立している。「ポリマーに注力するのは、それが当社のコアコンピテンシーだからだ。ストラタシス社はポリマー企業である。われわれはポリマー積層造形のリーダーであり、今後もそうあり続けると、ここに断言する。他の追随は許さない」と、ゼイフ氏は述べた。

フットウェアブランドであるエコー社のポルトガルとデンマークの開発拠点では、同社が事業を展開する市場における一般的な3Dプリントの適用範囲を超えて、3Dプリントが導入されている。エコー社は、靴のミッドソールの生産に3Dプリントを活用する、多くのブランドの1つだが、Origin社のP3技術を導入して以来、モールドとシューラスト(靴木型)の製造についても検討を始めている。

独ヘンケル社(Henkel)の「Loctite」を材料として使用してプリントされたモールドは、CNC加工のアルミニウム製モールドと同等の品質を備えつつ、製造時間は短く、製造コストは低いという。エコー社は現在、一足分(2つ)のモールドインサートを一晩でプリントする能力も保有しており、そうして得られたモールドインサートは、目に見える劣化を引き起こすことなく、数千回のショットに耐えることができる。

ゼイフ氏は、1つの用途でストラタシス社がOrigin社のような企業を買収する理由を説明できるとすれば、これがまさにその用途にあたるとしている。

「私は(以前の職務で)押出成形と射出成形を6カ月間管理していたが、ポリマーで1000ショットは達成できない。これがどれだけ破壊的なことであるか、考えてみてほしい。モールドを1カ月待つ必要はない。(一晩で)プリントすることが可能だ。プラスチック製ノズルをかつてプリントしたことがあるが、モールドを8カ月も12カ月も待ったことがあった。ここではそれを、数時間で行うことができる。それが破壊的技術であり、積層造形である」と同氏は述べた。

Origin社の3Dプリント技術によって製造されたフットウェアモールド。

ストラタシス社による1億ドルでのOrigin社買収が最初に発表されたのは2020年12月で、買収はその翌月に完了した。ゼイフ氏がストラタシス社のCEOに就任したのはその10カ月前で、同氏について同社は当時、今後のロードマップに「まさに必要な統率力」を保有しているとしていた。ゼイフ氏は、2019年12月にCEO任命が発表された際に、ストラタシス社は、「効率化とパーソナライズ化によって」サプライチェーンと製造を転換する準備が整っていると述べていた。そしてその後明らかになったのは、その転換を実行するには、複数の無機的成長(買収など)が必要だと、同氏が考えていたことである。まず行われたのが、Origin社の買収だった。それは、ストラタシス社が持っていないものをもたらすというだけでなく、他社が持っていないものをもたらすことになるという考えが、その背景にあった。

「買収対象には、他とは異なる何かを求めている」と、ストラタシス社のEMEA地区担当プレジデントを務めるアンディ・ラングフェルド氏(Andy Langfeld)は2021年9月、TCTに語っている。「多くの場合、この業界のイノベーションは、ハードウェア技術に関してはコピーアンドペーストに近く、あちらこちらの小さな改良である。P3についてわれわれが感じたのは、そのソフトウェアアルゴリズムと、ソフトウェア制御によって材料を作成する能力が、強みになるということだ。加えて、当社が実施したすべての試験から、Origin社のパーツ品質と表面仕上げが、市場における他のいかなるDLPソリューションよりも優れていることを、われわれは把握している」(ラングフェルド氏)。

Origin社に加えてRPS社やXaar 3D社の買収によって、ストラタシス社は一部の文化的要素も取り込み、徐々に現在の体制を築き上げていった。すなわち、よりオープンなアプローチによる材料開発である。

「材料はこの業界において、プロトタイプ開発から製造へと移行する際の主要な制約の1つである。われわれは間口を広げているが、非常に責任ある形でこれを行っている」と、ゼイフ氏は述べている。

同社のFDM材料エコシステムには、推奨材料(Preferred Material)、検証済み材料(Validated Material)、オープン材料(Open Material)からなる、3階層のアプローチが採用されている。推奨カテゴリに含まれるのは、ストラタシス社またはサードパーティの材料パートナーが開発した材料、検証済みカテゴリに含まれるのは、基本的な信頼性試験に合格した材料で、オープン材料には、Open Material Licenseを通して利用可能な、未検証のフィラメントが含まれる。

これは、同社独自の専門技術とパートナー企業の専門技術を生かして一定の品質管理水準を維持しつつ、材料の可能性を「自由に試して」調査する機会をユーザーに与えると、ストラタシス社は考えている。また、このプログラムが後押しとなって、FDMが製造の扉を打ち開くことを期待している。

「コラボレーションは発展であり、コラボレーションは進歩である」と、ゼイフ氏は言う。「今の状態に満足して、これまで何年もそうしてきたように、技術ごとに1つ、2つ、3つの材料を導入し続けることもできるが、本当に製造へと歩を進めたいのであれば、BASF社、ヘンケル社、DSM社といった、大企業とのコラボレーションが必要であり、その一方で、Evonik社とのコラボレーションも必要になる。協働体制が確立されれば、業界においてかなりの推進力となる。コラボレーション、収益の共有、収益性の共有にはさまざまなやり方があるので、どの企業にもメリットがある。ターゲットは大きい方が良い。また、多くの企業を巻き込んだエコシステムがあれば、われわれは(エコシステムがない場合よりも)製造への転換を進め、状況に満足して、プロトタイプ開発を続けることができる。動機付けは明白である」(ゼイフ氏)。

「ターゲットを拡大すれば、各装置で消費される材料は5~10倍になり、その材料の粗利益が多少低かったとしても、はるかに高い売上高と利益を得ることができる。単純なことだ」(ゼイフ氏)。

SAF技術で製造されたDQBD社のサドル。

ストラタシス社はPolyJetとFDMの各技術によって、プロトタイプ開発に3Dプリントを活用したいと考える企業に対して、有用な製品を提供し続けている。特にFDM方式のプリンタは、工具、治具、固定具の製造にも便利である一方で、この技術によって開発されたエンドユースの製品もいくつか存在する。しかし、買収を通してハードウェアポートフォリオを構築し、材料面で間口を広げる中で、かつてはプロトタイプ開発にあった同社の焦点は、ポリマー製品の「ハイエンド製造」に重きを置く方向に、移行しつつある。

その移行は、技術だけでなく、同社顧客を代表する人々とのストラタシス社の関係にも大いに依存することになると、ゼイフ氏は考えている。

「顧客を訪問すると、彼らの考え方や将来の方向性が、業界よりもはるかに進んでいることに気づく。イノベーションはそこに導入されるのだということを理解することが重要で、われわれに必要なのはただ、彼らの話を聞いてそこに同席し、彼らが確実に成功できるように導くことである」と、ゼイフ氏は述べた。

そのような顧客の1つが、ドイツのデザイン会社であるDQBD社だ。同社は、ストラタシス社がXaar3D社買収によって取得した「Selective Absorption Fusion」(SAF)技術を、パーソナライズされた自転車用サドルの製造に利用している。乗り手の要望に応じて開発されるこれらのサドルは、3Dプリントによる半硬質のスパインと、3D熱成形されたシートパッドで構成されており、SAFの採用は、数千ユーロものコスト削減と数週間もの時間短縮につながっている。

Xaar3D社の買収は、ゼイフ氏が同社に加わるずっと以前から計画されていたもので、創業者で前CEOのスコット・クランプ氏(Scott Crump)によって進められていた。クランプ氏とSAFの主要発明者であるニール・ホプキンソン氏(Neil Hopkinson)は2017年に、イスラエルでばったり出会い、急遽設けられた会食の席でホプキンソン氏は、自身が15年近くにわたって取り組んできた技術をストラタシス社が販売する、という構想を売り込んだという。

ストラタシス社はその後、Xaar 3D社に対する出資を徐々に増額し、まずは株式の15%を取得した後に、その割合を45%まで増やし、最終的には同社事業全体を買収した。その頃までにホプキンソン氏と同氏のチームは、主力システムであるH350のプロセスアーキテクチャに改良を加え、すべての融合粒子の温度プロファイルが粉末床全体にわたって同一になるようにしたほか、材料を粉末床全体に分散させる際に粉末の熱安定性を確保するための「Big Wave」システムを開発した。その時期が来たときに、この技術が何の躊躇もなく業界に受け入れられるようにすることを目指して、すべての設計が行われた。

「目的は製造であると、100%明確に定めている」と、ホプキンソン氏はFormnextでTCTに対して述べた。「歩留まりを高くすることとパーツの一貫性を保つことを常に意識し、細心の注意を払っているのはそのためだ。量産に移行するにはそれが絶対に不可欠だからである。また、ビルドごとに大量のデータを提供している。7ページにもわたる主要センサからのデータのグラフを提供し、パーツのメーカーが、製造過程を追跡して製造物の正当性を確認できるようにしている。さまざまな項目の範囲内を維持し、確実に製造を目的としている」(ホプキンソン氏)。

ストラタシス社のSAF技術採用3Dプリンタ「H350」

これを補完する動きとして、FormnextではSAF技術採用の3Dプリンタ「H350」に、ストラタシス社の「GrabCAD Print」ソフトウェアが追加されることが発表された。これにより、アクセス可能で接続されたエンドツーエンドのワークフローが確保される。ユーザーはパーツを自動的に積層し、ソフトウェアの報告および解析機能から洞察を得て、「GrabCAD Print Mobile」や「GrabCAD Shop」を利用することができるようになる。

2021年10月の時点で、GrabCAD Printは、「GrabCAD Additive Manufacturing Platform」の1つのソフトウェアコンポーネントとなっている。このプラットフォームには、「GrabCAD Print Manager」や「GrabCAD Print Shop」といった他のツールも含まれており、「生産規模の積層造形業務を管理」するための手段を、ユーザーに提供するものとなっている。ハードウェアポートフォリオを構築した後のストラタシス社の関心と投資は、「ソリューション」の提供に向けられる予定で、後処理とデジタルスレッドの2つが、優先順位の高い項目として挙げられている。

「とても単純なことだが、Boeing社と話をしたとき、同社の積層造形は16のフェーズで構成されており、フェーズごとに入力と出力が存在し、データのキャプチャが必要だということだった。品質と検査という最後のフェーズに到達したときには、16フェーズすべてからのデータが必要である。当社はこれに投資する必要がある」と、ゼイフ氏は述べた。「(それから)後処理だ。後処理を理解するために、私はかなりの時間を費やしている。ワークフローを提供しなければならないからだ。アプリケーションごとにワークフローが存在する。それが当社の考え方であり、今後開発するものである」(ゼイフ氏)。

ゼイフ氏にとって、そのロードマップは明瞭である。同社は対象業界のニーズに応えるために、研究開発(R&D)に対する莫大な投資を続けるつもりだ。現在保有する製品ポートフォリオをさらに拡充していくことで、ストラタシス社は、ポリマー3Dプリントで競合する他社とは一線を画す存在になると、ゼイフ氏は考えている。

「努力を重ねているが、努力だけでは十分ではなく、賢明さも必要だ。われわれには、模倣しがたいコアコンピテンシーがある。アプリケーションエンジニアの経験と、社員の知識と経験がある。人間の力を決して過小評価してはいけない。ビジネスの相手は人間だからである。私には、あふれるほどの情熱と献身を注ぐ素晴らしいチームがいて、私は彼らから活力を得ている。当社には、再販業者のためのインフラがある。私にとって、新たな製品を市場に売り込むのは何でもないことだ。再販業者に対して『これも販売して』と伝えるだけで、それが可能だ。再販業者にはトレーニングを提供しており、知識やマニュアルはすべて揃っており、ポリマーを熟知している。このインフラは最強だ。また、当社はイノベーションを続けている。これこそまさに、基盤の構築と私が呼ぶものである」(ゼイフ氏)。

ゼイフ氏は、ストラタシス社のブースを一通り紹介した後、説明を始めた最初の立ち位置に戻りながら、ストラタシス社の長年にわたる取り組みと、Origin社、RPS社、SAF技術の獲得で今後期待される成功について誇らしげに語った。全体を通して興奮冷めやらぬ様子だったのは、これが同氏にとって初めての積層造形見本市であることを物語っていたかもしれないが、コンサルティング会社の米マッキンゼー社(McKinsey)でパートナーを務め、化学企業でR&Dマネージャーを務めた経験は、十分にそれを支えていたといえる。しかし、同氏は以前に一度、Formnextのフロアを訪れたことがある。ストラタシス社CEO就任の申し出を受け入れることを決めたのは、その時だという。

「2年前はデューディリジェンスのためにこの場を訪れた。慎重にデューディリジェンスを行い、可能性は無限だと判断した。そのような申し出を断ることはできない。私がストラタシス社に謝礼を支払わなければならないくらいだ。その可能性を考えてみてほしい。朝目覚めると、製造方法を転換する手段が目の前にある。ありがとう。与えられた機会に感謝している」と述べて、ゼイフ氏は話を締めくくった。

オリジナルコンテンツ:TCT Magazine International
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