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バクテリアを含むインクによる3Dプリンティングで骨のような合成物

May, 8, 2023, Lausanne--EPFL研究者は、炭酸塩産生菌を含むインクを3Dプリントする方法を発表した。3Dプリントされたミネラル化(鉱化)バイオ複合材料は、前例なく強力、軽量、環境に優しく、アプリケーションは芸術からバイオメディカルまでの範囲がある。

自然は、軟体動物の殻や骨のように、同時に軽量で強力、多孔質で固い複合材料の生成では並外れた才能がある。しかし、そのような材料を実験室あるいは工場で作る、特に環境に優しい材料やプロセスを利用して作るのは、極めて難しい。

EPFL工学部Soft Materials Laboratoryの研究チームは、解決を自然に求めた。チームは、パスツール胞子嚢(Sporosarcina Pasteurii)を含む3Dプリントできるインクを開発した。Sporosarcina Pasteuriiは、尿素含有溶液に触れると鉱化プロセスを誘発し、炭酸カルシウム(CaCO3)を生成する。結果、研究者は、そのインク、BactoInkを使い、実質的にどんな形状でも3Dプリントできる。それは、数日の間に徐々に鉱化する。

「3Dプリンティングは、一般にますます重要度を増しているが、3Dプリントできる材料の数は限られている。インクが特定のフロー条件を満たさなければならないという単純な理由である。例えば、静止状態では固体のように振る舞わなければならないが、3Dプリンティングノズルから押出可能でなければならい、ケチャップのようにである」とラボのEsther Amstadは説明している。

同氏の説明によると、小さな鉱物粒子を含む3Dプリンティングインクは、以前に使われ、このフロー基準の一部を満たしていたが、結果としての構造は柔らかくなる傾向があった。あるいは乾くと縮む傾向があり、最終製品の形状で亀裂が入り、制御不能になった。

「したがってわれわれは簡単なトリックを思いついた。鉱物をプリントする代わりに、われわれのBactoInkを使ってポリマスカフォールドをプリントした。するとこれは、次の別のステップで鉱化した。約4日後、スカフォールド内のバクテリアで始動された鉱化プロセスは、90%を超える鉱物含有量の最終製品になる」。

結果は、強力で弾性のあるバイオ複合材料である。これは、標準3Dプリンタと自然の鉱物を使って製造可能である。セラミック製造に必要になることがよくある極端な温度は不要である。最終製品は、もはや生きたバクテリアを含んでいない。それらが鉱化プロセスの最後でエタノールに浸されているからである。

鉱化誘発にバクテリアを利用する初の3Dプリンティングインクを説明する方法は、Materials Today誌に掲載レタ。

パッチアップアート、サンゴ礁あるいは骨
Soft Materials Labのアプローチは、芸術やエコロジーから生体医学までの広い範囲で複数の潜在的なアプリケーションがある。Amstadの考えでは、BactoInkによって芸術作品の修復が極めて容易になる。直接モールドあるいはターゲットサイトに注入できるからである、例えば花瓶の亀裂、像の欠損部分。インクの機械的特性により、芸術品の修復に必要な強度と収縮抵抗が得られ、修復プロセス中のさらなる損傷を阻止する。

環境に優しい材料だけをその方法が利用すること、また鉱化生体複合物を生成できることで、それは人工サンゴ礁構築の有望な候補になる。これは、損傷を受けた海洋サンゴ礁の再生に役立てるために利用できる。最後に、生体複合物の構造と機械的特性は、骨の特性を模倣しており、これは将来の生体医療アプリケーションにとって興味深いものになる可能性がある。

「BactoInk処理の多様性は、鉱化材料の低環境負荷と優れた機械的特性と組み合わせると、今日の合成複合材よりも自然材料に近い軽量、耐荷重複合材に多くの新しい可能性を開く」とAmstadは、まとめている。
(詳細は、https://actu.epfl.ch)