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3Dプリントの超高強度、延性を備えた高性能ナノ構造合金を開発

August, 9, 2022, Amherst--マサチューセッツ州立大学アーマスト(UMass)とジョージア工科大学(Georgia Tech)の研究グループは、デュアルフェーズ、ナノ構造ハイエントロピー合金を3Dプリントした。これは、他の最先端AM製造材料の強度と延性を凌駕しており、航空宇宙、医療、エネルギーおよび運輸のアプリケーション向けのハイパフォーマンスコンポーネントにつながる。
 研究リーダーは、UMass機械・産業工学准教授、Wen ChenとGeorgia Tech機械工学教授、Ting Zhue。研究成果は、Natureオンラインに発表された。

過去15年で、ハイエントロピー合金(HEAs)は、材料科学の新しいパラダイムとしてますます人気が出ている。ほぼ等しい割合で5またはそれ以上の元素で構成され、それらはほぼ無限の数の固有の合金の組合せとなる。従来の合金、真鍮、炭素鋼、ステンレススチールやブロンズは、1またはそれ以上の微量の元素と組み合わせた主元素を含む。

積層造形(AM)は、最近、材料開発への強力なアプローチとして登場してきた。レーザベース3Dプリンティングは、従来のルートでは容易にアクセスできないような大きな温度勾配、高い冷却率を作れる。しかし、「AMとHEAsの利点の組合せを新しい特性の実現に利用する可能性は、ほとんど明らかになっていない」(Zhu)。

マルチスケール材料と製造ラボの研究チームは、HEAと最先端の3Dプリンティング技術、レーザ粉末床溶融を組み合わせて前例のない特性を備えた新しい材料を開発した。そのプロセスにより、材料が溶融し、従来の冶金に比べて急速に固化するので、Chenによると、出来上がったコンポーネントで「均衡はほど遠い極めて多様なマイクロ構造が得られる。このマイクロ構造はネットのように見え、ランダムな方向をもつマイクロスケール共晶コロニーに埋め込まれた、面心立方(FCC)や体心立方(BCC)ナノラメラ構造として知られる交替層でできている。その階層的ナノ構造HEAにより、2つの相の協調変形が可能になる。

「この独特のマイクロ構造の原子再配列から、珍しい超高強度と延性が生ずる。通常、強力な材料は脆弱になりがちだからである」とChenは言う。従来の金属鋳造と比べると「ほぼ3倍の強度を得た。それは延性を失わないとともに、実際、同時にそれを増強した。多くのアプリケーションで、強度と延性の組合せは重要である。われわれの成果は、材料科学と工学の両方でオリジナルであり、素晴らしい」と同氏は話している。

「強力で延性を持つHEAsを作製できることの意味は、これら3Dプリントされた材料が、加えられた変形への耐性がよりロバストであるということである。これは、強化された機械的効率性や省エネ向けの軽量構造設計にとって重要である」と論文の筆頭著者、ChenのPh.D学生、Jie Renはコメントしている。

ジョージアTechのZhuのグループが研究のコンピューモデリングを主導した。同氏は、デュアルフェーズ結晶塑性コンピュータモデリングを開発した。FCCとBCCナノラメラ両方の機械的役割、それらがどのように協働して材料に付加的強度と延性を与えるかを理解することが狙いであった。

「われわれのシミュレーションは、BCCナノラメラにおける驚くほどの高強度で高硬化応答性を示している。これは、われわれの合金の傑出した強度-展性シナジーを達成するたに極めて重要である。この機械的理解は、並外れた機械的特性を備えた未来の3DプリントされたHEAsの開発のための重要な基盤となる」(Zhe)。

加えて3Dプリンティングは、形状的に複雑でカスタマイズされたパーツの実現のための強力なツールを提供する。将来的に、3Dプリンティング技術とHEAsの幅広い合金設計スペースを利用することで、バイオメディカルや航空宇宙アプリケーション向けの最終利用コンポーネントの直接製造に十分 な機会を開く。
(詳細は、https://www.umass.edu)