Science/Research 詳細

トーンの設定:カラー3D印刷の開発

March, 7, 2022--「今のところ、色はあるに越したことはないが、われわれはそれをなくてはならないものにしたい」。

ミレニアムの変わり目は多くの変化をもたらした。2000年問題でバグの恐れがあるにもかかわらず、飛行機は飛び、テクノロジーの進歩により、インターネット、さらにはソーシャルメディアやモバイルアプリなどが台頭するだろう。音楽を買うことは過去のものになり、印刷物の文字を読むことも同じ傾向になるだろう。また、カラー3D印刷の始まりと時を同じくして、迅速なプロトタイプ作成者は、部品をモノクロでレイヤーごとに構築する代替法をすぐに利用するようになるだろう。

特にその動きの先駆者は米Z Corpだった。同社は12年後にスリーディー・システムズ社(3D Systems)に買収されるが、それまでにカラー3D印刷技術により、ライカ社(LAIKA)などは、製造後に部品を塗装するのではなく、製作中に色をつけ始めることができていた。しかし、ライカ社のラピッドプロトタイピングディレクターであるブライアン・マクリーン氏(Brian McLean)は、パラノーマン(2012年)に取り組んでいたときでさえ、カラー3D印刷技術は「印刷ごとに」一貫性がないことに気付いたと、2018年にTCT誌に語っている。技術について不安を抱いたのは、ユーザーだけではなかった。米RIZE社の最高技術責任者であるユージン・ギラー氏(Eugene Giller)は、2005年から2010年までZ Corpの上級R&D化学者として働いていたが、彼もZ Corpのカラーテクノロジーが出力する部品の品質に満足していなかった。

「フォームだけでなく、完全に機能するカラーパーツを提供できる技術であるべきだと常に思っていた」とRIZE社の創設者はTCT誌に語った。「私にとって、それが強みのすべてだ」。

現在、RIZE社、ストラタシス社(Stratasys)、HP社、ミマキエンジニアリング(MIMAKI ENGINEERING)など、カラー3Dプリンターを市場に供給している企業が多数ある。ミマキエンジニアリングは、2018年に「1,000万色以上」を印刷できる3DUJ-553プラットフォームを発売し、2020年には小型の3DUJ-2207システムを実現した。より大きな3DUJ-553プリンターは、倍のビルドボリュームを誇っている。500 x 500 x 300mmの造詣領域を誇り、UV硬化インクジェットプロセスを使用して、部品をフルカラーで印刷する。白と透明のインクを色と混ぜて透明度を上げることもできるが、水溶性の材料を使用すると、後処理時間わずか数分で済む。

オランダのサービスプロバイダーであるMarketiger社は、ミマキのカラー3D印刷技術の最初のユーザーの1社だった。2019年後半の時点で、同社は毎年最大2万のカスタムフィギュアを生産していたが、2020年の初めに2番目の3DUJ-553が設置された。機械の自動クリーニングシーケンスとキューイング機能により、Marketiger社は、プリンターに触れず必要なく連続で最大72時間の印刷が可能が、通常は夜間の印刷を行っている。

人々の3Dスキャンに基づくカスタムフィギュアというコアビジネスの性質上、同社は100%の歩留まりを目標としている。自分自身をスキャンする誰もが、3D印刷されたフルカラーモデルを確実に入手できるように、Marketiger社は、スキャンの品質とモデルの編集を確認してからモデルの製造を開始する。しかし、Marketiger社で印刷ボタンが押されると、ほとんど止まることはない。

「我が社の根幹は、24時間年中無休で稼働するこの機械だ」とMarketiger社のディレクターであるマイケル・ドゥ・ヴィット氏(Maikel de Wit)はFormnext 2019でTCT誌に語った。これは新しい技術であるため、引き起こされる問題があるが、われわれはこの機械を24時間年中無休で80%超の使用率にすることができる」。

カラー3D印刷は長年にわたって、明らかに多くの進歩が見られた。初期のカラー3D印刷部品は不正確で脆弱性が想定され、Marketiger社がミマキの技術で持っているような技術を中心にビジネスを構築することはほとんど不可能だった。それでも、技術を市場に投入する企業は、やるべきことがまだまだあることを知っている。

ギラー氏は常にその考え方を持っていた。同氏は、ひとつには、Z Corpプリンターの部品の品質に満足していなかったため、RIZE社を設立した。それでも、ギラー氏は常にカラー3D印刷の可能性を信じてきた。RIZE社を始めるにあたり、同氏は、最小限の後処理で済むフルカラーの機能部品を提供するために、あらゆる環境で動作が可能なプリンターを提供することを目指した。彼の答えはXRIZEである。これは、特許取得済みのAugmented Material Deposition方式を利用して、押し出された材料の層の間に配合された離型剤を噴射することによって部品を構築する。押し出しプロセスではカーボンコンポジットを印刷できるが、プロセスの噴射面では、フルカラーグラフィックスのボクセルレベルのアプリケーションが可能になる。

RIZE社の場合、潜在的なアプリケーションはプロトタイプやフィギュアを超えている。詳細はTCT誌の2号第29巻にあるが、マルチカラーの医療モデルは、ジグや固定具と同様に、この技術の重要な役割を果たす。製造支援アプリケーションでは、高性能のポリマーと複合材料を使用することで、部品が工場の床に耐えられるようになり、ページ上部に表示される製造支援のように、部品の交換が必要な時期を色で示すことができる。これらは、RIZE社の顧客がフルカラー技術を使用している方法のほんの一部であり、ボストンに本拠を置く企業に、まだ改善の余地があることを伝えている。

「彼らは新しい材料を求めている」とギラー氏は言う。「だからこそ、われわれちは新しい素材セットを導入すべく懸命に取り組んでいる。彼らは今のところ、[現在の材料]に本当に満足しているが、一部の顧客は、車の内部のにオイルに触れている箇所に部品を入れたいと本当に望んでいる。また、エラストマーも求めている」。

その結果、RIZE社は、そのような製品を追加することに取り組んでおり、Rizium One、Rizium GF(Glass Filled)、及びRizium Carbonという材料を提供している。当然のことながら、顧客の需要の高まりに対応するためにカラー3D印刷ポートフォリオを構築しているのは同社だけではない。

ストラタシス社は、その点で多作である。現在、Jシリーズポートフォリオで半ダース以上のフルカラー3D印刷システムを提供しており、一部は歯科及び医療市場向けに特別に設計されている。6月には、冷蔵庫のように静かに(53DB未満)動作するオフィス向けのフルカラーシステムであるJ55 Primeと、さまざまな新しい機能性素材を発表した。豊富な機械オプションにもかかわらず、材料の提供を拡大することは、同社のカラー印刷の提供を推進するための主要な方法と見なされている。

ストラタシス社は、J55 Primeに合わせて、Elastico Clear及びElastico Blackといったゴムのような素材、長時間の肌や身体への接触に対応するVero ContactClearという半透明の生体適合性素材、インパクトのあるデザインに対応するDigital ABS Ivory、及びVeroUltraファミリーで可能な超不透明な色をの運用を開始した。ストラタシス社のカラーポートフォリオの他の素材には、柔軟なVeroFlexと用途の広いVeroVividが含まれる。

3MFファイル形式も進歩し、KeyShotとの連携により、ストラタシス社は、あらゆるデザイナーが望むディテールと美しさ提供する能力に自信を持っているが、RIZE社のように、継続的に材料開発を行い、パフォーマンスの向上を目指している。

「機械的特性に関しては、まだ進行中である」と、ストラタシス社の副社長であり、材料ビジネス及び設計部門の責任者であるZehavit Reisin氏は述べている。「PolyJet材料について説明するとき、それはアクリルベースのフォトポリマーに関するものであり、たとえば熱可塑性プラスチックとは動作が異なる。部品に応力、熱、過酷な環境条件を課すと、熱条件や寸法安定性が変化する可能性があり、耐久性に問題がある。そこで、PolyJetを使用して最終用途の部品を製造する(疑問はあるが)。しかし、われわれはJシリーズで今日見られるものの材料特性の改善に引き続き懸命に取り組んでいる。つまり、色、透明度、機械的及び熱的特性は、必要な環境条件に耐えるようにより良くなる」。

カラー3D印刷は、医療及びプロトタイプの分野で定着しているため、他の分野に目が向けられている。外科医やデザイナーにとって、カラー3D印刷の利点は明らかだが、他の市場ではその取り込みは遅い。医療処置は常に施され、部品は設計と再設計が繰り返されるため問題はないかもしれないが、この業界では、常に限界を押し上げる意欲がある。そしてギラー氏は、フルカラー3D印刷の進歩による影響を楽観視している。

「誰もがカラーテレビを持っており、白黒に戻りたい人はいないと思う」とギラー氏は言う。「しかし、私は白黒テレビの時代を知る年代で、『色は必要ない。テレビは芸術だ』と言われていたことを覚えている。今では、誰もこのように考えていない。プリンターを低価格で手に入れることができれば、カラー印刷に慣れるだろう。今のところ、色はあるに越したことはないが、われわれはそれをなくてはならないものにしたいと思っている」。

オリジナルコンテンツ:TCT Magazine International
https://www.tctmagazine.com/topics/international/