Business/Market 詳細

「メッセージの共有ではなく行動を目指す」―ストラタシス社サステナビリティ担当VP、環境に配慮した製造を語る

December, 15, 2021--各国政府は法規制を議論しており、一般市民はライフスタイルを変化させており、活動家は抗議を続けているが、企業は気候危機に対処するために、何をしているだろうか。

1
ローザ・コブレンツ氏、米ストラタシス社サステナビリティ担当バイスプレジデント

ローザ・コブレンツ氏(Rosa Coblens)と同じように、サステナビリティ(持続可能性)担当バイスプレジデントなどの役職を設ける企業は増えている。3Dプリント技術の先駆的企業の1つである米ストラタシス社(Stratasys)は、自社を付加製造(積層造形)業界、特にポリマー関連のリーダーとして位置付けたいと考えており、サステナビリティの面でも主導力を発揮する必要があると判断した。同社は2021年初夏の2週間の間に、付加製造事業者グリーントレード協会(Additive Manufacturer Green Trade Association:AMGTA)に創設メンバーとして加わり、コミュニケーション関連の役職に就いていたコブレンツ氏を、同社のサステナビリティの取り組みを統括する役職に昇格させた。

3Dプリントのサステナビリティ上のメリットについてはかなり話題になっており、同社の目的は、それをESG(環境、社会、ガバナンス)の観点から深く観察して、そうした主張の根拠を明らかにしていくことにある。

「メッセージを共有することではなく、行動することを目指している」と、コブレンツ氏は開口一番、口にした。「付加製造の価値についてわれわれが知っていることの多くは、データによる裏付けがない。部品の作成に必要な分しか材料を使わず、定義上サステナビリティが高いことから、無駄が少ないことがわかっていると、われわれは口にするが、それに関する研究調査は行われておらず、具体的なデータは存在せず、基準が設けられていないために、前年よりも改善していくということができない」(コブレンツ氏)。

コブレンツ氏は新しい役職において、欧州連合(UN)の持続可能な開発目標(SDGs)の「つくる責任つかう責任」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「気候変動に具体的な対策を」「質の高い教育をみんなに」の各項目の達成を目指す取り組みを統括する。これに伴ってストラタシス社は、廃棄物を削減して材料を再利用し、包括的な研究を推進して情報を利用しやすい状態にし、同社の二酸化炭素排出量を削減し、サステナビリティ関連の教育と学習の機会を創出する予定だ。

コブレンツ氏が取り組みを進める中で、これらのイニシアチブを推進したのは、同社の最高経営責任者(CEO)であるヨアヴ・ゼイフ博士(Dr Yoav Zeif)をはじめとする上層部だったが、SDGsとの対応付けを図るにあたって、一連のアンケートに回答することによって、同社の初期目標の方向性を定めたのは、従業員らだった。コブレンツ氏によると、従業員らも上層部と同じ情熱を持って、これらの取り組みに臨んでいるという。

ストラタシス社は今後、同社のSDGs関連のプロジェクトを立ち上げ、進捗状況を確認するためのKPI(重要業績評価指標)を定め、議論を育むためのフォーラムを設立し、取り組みを支援するための予算を割り当てる予定だ。コブレンツ氏はこれを、同社における「真剣な任務」であると表現し、自身とそのチームによる取り組みが、付加製造業界のベストプラクティスの確立に貢献できることを期待している。AM技術の性質上、そのプロセスは決して完璧にはならないという認識はあり、ストラタシス社はできる限りのことを行わなければならないというのが実情である。

「われわれは製造業に参入している。それには大量のリソースが必要で、当社は環境に優しい企業にはならないし、環境に優しい製品を販売するわけでもない。しかし、その過程において気候にプラスの影響を与えられるように、常に改善を図ることを約束する」とコブレンツ氏は述べた。

付加製造の価値提案と、軽量設計からデジタル在庫やローカル生産にいたるまでのそのメリットから、コブレンツ氏は、AM業界においてより多くの人が自分と同じような役職に就くべきだと考えている。3Dプリントの応用分野が拡大して、より多くの部品が製造されるようになるにつれて、その技術プラットフォームを提供する企業の責任も拡大する。

「サステナビリティと収益性は連動する。つまり、事業構築を進めるにつれて、SEGの各要素にわれわれが与え得る影響は大きくなる」とコブレンツ氏は述べた。「強力な企業ほど、環境に配慮した製造を導入する責任は高くなり、ものづくりを開始する前に、何を作り出しているかを考えることが必要になる。われわれは、単に製造を徐々に変えていこうとしているのではなく、おそらく今後10年間の製造業の様相を変えようとしている。したがって、室内にいる周りの人々、イノベーションプロセス、対象コミュニティ、顧客とそのニーズに関する深い思考に基づいて、それを行う必要がある」(コブレンツ氏)。

「3Dプリントは気候という観点において、世界を実際に変えることのできるソリューションと考えられていると思う。在庫や、プリント前のデジタルイテレーションを削減することができ、この技術の採用と改良によって非常に多くの削減効果が得られる。当社の従業員が毎日起床する理由はそこにあると思う。彼らは自らの取り組みがその一端を担っていることを知っている。それは改革というよりも進化に近い」とコブレンツ氏は述べた。

オリジナルコンテンツ:TCT Magazine International
https://www.tctmagazine.com/topics/international/