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ドイツ鉄道の積層造形責任者、鉄道業界における3Dプリントを語る

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January, 13, 2022--ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)の積層造形(AM)責任者で、Mobility goes Additive(MGA)のマネージングディレクターを務めるステファニー・ブリックウェッデ氏(Stefanie Brickwede)が、鉄道業界における3Dプリント、サステナビリティに真摯に向き合う必要性、企業のイノベーションを促すパンデミックの圧力について語ってくれた。

TCT:前回お会いしたのは、パンデミック禍の3Dプリントの利用に関するMakerBot社の座談会の場だった。ドイツ鉄道は既に長い間AMを利用しているが、AMの導入が加速していた当時の状況について、あなたはどのように見ているか。

SB:パンデミックだけが理由ではない。われわれは、そうしたサプライチェーンの中断に毎月のように対処しなければならない。パンデミック禍であることが功を奏したのは、製造の代替手段の検討に対する企業の意識が高まっていることだ。多くの企業が、積層造形の導入を以前よりもはるかに前向きに考えていると述べている。それが理由の1つである。その他の理由として、企業は経済的圧力を受けていて、行動を起こさなければならなかった。イノベーションについて考察する必要性は、2年前よりもはるかに大きくなっている。

TCT:座談会では、その前向きな姿勢がパンデミック後も維持されるかどうかという疑問が提示された。あなたが今述べたように、パンデミックだけが理由ではない。現時点では、どのように考えているか。

SB:非常に多くの企業が、部品やスペア部品など、考えうるすべてのものに、この技術が適用できることを発見している。工具がその良い例だ。工具については何の認可も必要ないので、簡単に技術を導入することができる。鉄道業界や、自動車業界でははるかに広い範囲で、非常に長い間AMがプロトタイピングに利用されており、今では工具に対する利用がますます増加している。プリンタが構内、メンテナンス工場、製造現場に設置されており、大雑把な理論としては、夜のうちに製造すれば翌日利用できるということになるので、とても素晴らしいことだ。ドイツ鉄道やその他の鉄道会社でも現在、それが実際に行われている。当社が所属するネットワークは、欧州の8つの鉄道会社で構成されているが、他の企業もまったく同じことを考え、検討している。

プリンタを自宅に所有していて、仕事のアイデアを提供してくれる若いユーザーや年配ユーザーも多い。「3Dプリントのプロジェクトや部署への参加に興味のある人」を募集すれば、募集を心待ちにしていたという人々を必ず見つけることができる。

TCT:ドイツ鉄道だけでなく、他にも多くの鉄道会社がAMを利用しているという話が出たが、パンデミック禍にAMを利用する企業が増える中、常に一歩先を行っているという感覚はあったか。

ステファニー・ブリックウェッデ氏、ドイツ鉄道の積層造形責任者で、Mobility goes Additive(MGA)のマネージングディレクター。

SB:鉄道業界では、ドイツ鉄道とフランス国有鉄道(French SNCF)が群を抜いてリードしている。しかし、他の企業も技術の導入にかなり前向きだ。RAILiabilityという、鉄道と法的責任に取り組む作業部会が結成されており、この作業部会では非常にオープンに意見交換が行われている。

また、自動車業界で非常に大きな変更管理プロジェクトが進行していることも、周知のとおりだ。eモビリティへの注力が必要であるため、人々の意識改革が求められている。供給メーカーも、自動車業界におけるその危機に見舞われており、1社だけではなくかなり多くの企業が医療業界向けのAM部品の製造を既に検討しているというのは、驚くべきことだ。3年前には、自動車部品の供給メーカーが医療用部品を製造するなど、あまりにも突飛な発想で、誰も考えたこともなかっただろう。現在は、変化が必要で、新しい発想を受け入れる姿勢が必要で、他の市場に目を向けることが必要であるため、それが可能になっている。医療業界が、AMにとって素晴らしい市場であることは間違いなく、(MGA)ネットワークは既にモビリティと医療の両方を対象としているので、われわれにとっても素晴らしい市場だ。3年前に医療業界に参入したとき、「なぜ医療に参入するのか。鉄道会社なのに」という意見が取締役会の中にあった。私は当時、試してみて2年以内に結果が出なければ、また止めればいいと言った。パンデミックが発生した後、そのような質問を繰り返す人は、もう誰もいない。

TCT:鉄道部門で主に使われるのは、ポリマーか、それとも金属か。

SB:金属も使われている。鉄道業界の3分の2がポリマーで、およそ3分の1が金属だ。工具ケースや列車内装の小型部品は、主にポリマー部品である。これには、航空宇宙業界よりもさらに高いレベルの難燃性が求められる。列車の停止を防ぐための部品をプリントする場合に使用するのは、主に金属である。金属の方が当然ながら、はるかに高価で、認可が非常に重要になる。私がとても興味深く感じているものとして、例えばわれわれは今、駅のコンクリートに対する最初のユースケースに取り組んでいる。それが大きな可能性を秘めていることには絶対的な確信があるが、スペア部品のプリントに対する5年前の状況に似ていて、コンクリートのプリントはまったく新しい概念だ。認可に向けた取り組みだけでなく、材料や適切なユースケース(の検索)にも取り組む必要がある。

われわれは現在、エラストマーのプリントにも取り組んでいる。エラストマーのプロトタイピングではない。プロトタイピング用のTPU(熱可塑性ポリウレタン)はかなり以前から存在しており、ここで話しているのはスペア部品のことだ。それらのスペア部品は、オイルや泥などのあらゆる汚染にさらされた状態で、少なくとも5~6年間は列車に装備される必要がある。

TCT:ドイツ鉄道の社内のAM能力について、概要を教えてほしい。

SB:素晴らしいチームが結成されているが、少なくとも85%程度は、まだプリント請負業者に頼っているため、プリンタ台数は多くない。ユースケースに対するソリューションに注力したいので、機械の購入や、その機械が適切かどうかの判断に労力を割きたいとは思っていない。また、われわれは製造業者ではなく、保守業者にすぎない。われわれにとってより重要なのは、非常に幅広い種類の材料、技術、ユースケースに対応すること、ユースケースに合致する技術を正確に特定すること、新しい技術を広く受け入れることだ。(中略)1台や2台や3台の機械を扱うことだけに集中したいわけではない。当社には現在、60台を超えるデスクトッププリンタが存在する。それらは主に、トレーニングや工具製造のほか、アイデアを具現化する機会を人々に与えるために使われている。

補助的な線路止め(提供:ドイツ鉄道)

TCT:それにはかなりの再設計が必要になるのだろうか。それとも現在の設計をAMに転用する方がよいのだろうか。

SB:保守業界では一般的に、以前の部品の機能を完全に踏襲するのが常だ。したがって、再設計や人間工学設計は行われない。それを行えるのは、一からの構築を目指す企業で、その場合はもちろん、その可能性を最大限に活用することができる。しかし、認可プロセスに従う必要がある場合は、そこまで大きな変更を加えることはしない。当然ながらわれわれはまだ、多くの認定機関がAMについて学ばなければならない段階にあるためだ。認定機関にはまず、技術を信用してもらう必要があるが、これまでの設計を踏襲した方が、実証ははるかに容易だ。日に日にその門戸は拡大している。

TCT:MGAが掲げるミッションの1つに、エコロジカルなサステナビリティがある。AMがそれにどのように寄与するか、あなたの考えを聞かせてほしい。

SB:AMに携わるほとんどの企業が、起業したばかりの新興企業か、中小企業だ。したがって一般的に、単なるグリーンウォッシングにとどまらず、エコロジカルなサステナビリティを重視するように、注意喚起する必要がある。材料のエコロジカルなサステナビリティ、製造サプライチェーン全体、いかにしてそれを改善するかということに、さらに力を入れて取り組む必要があり、他の技術ほど多くの材料を必要としないというだけでは不十分だ。エネルギー消費や、材料の製造方法についても、議論する必要がある。また、有効性の高いユースケースについても議論が必要だ。

MGAにおいて、AMPOWER社との共同研究をスタートしたのはそのためである。この研究は金属を対象に、部品や材料技術などに関するデータを取り込んで、そのサステナビリティに関する何らかの指標を得るためのロジックを開発することを目的としている。当然ながらこれは、個別のライフサイクル評価に基づくものではないが(中略)、絶対に取り組むべき課題である。そうしなければ、この技術はその独自のセールスポイント(Unique Selling Proposition:USP)を失ってしまう。

われわれは皆、仮想倉庫に対する取り組みを強化する必要がある。(中略)ドイツ鉄道の分析によると、6年後には在庫として保有しているエラストマー部品を、使用するか否かにかかわらず、すべて廃棄しなければならない。(中略)これは、AMにうってつけの応用分野である。

オリジナルコンテンツ:TCT Magazine International
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